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アカプログ

ソフ その①

この間、「尊敬する人は誰」といわれて、
あんまし考えずに、「ははかたのそふ」と答えた。
答えてちょっとびっくりした。そうかあ~・・・そうかも。
そんな感じ。

「尊敬する」という言葉が正しいかどうかは分からないけど、
自分の中の何かを形成したという意味では、かなり重要な位置に
来る。

4年前になくなった。

ソフは、私が物心ついた頃にはもう「おじいちゃん」で、晴耕雨読の人だった。
小さい頃、夏休みにはほぼ丸々祖父母の住む島に行かされていた私にとっては、
一畑電車にポツンと一人で揺られて松江温泉駅まで着くと、そこにはソフが車で
迎えに来ていた。
島はまるでオランダのように山のない島で、でも建物もないから全くフラットな様相だ。
朝鮮人参と牡丹の花が名物の県外の人からは名前も知られないような小さな島。

小柄な体型で、頑固者で、夏場は必ず晩御飯に小さな鉢でそうめんを食べていた。
「気難しい」方だったのではないかと思うが、孫にとってはいいおじいちゃんである。
家では、仏壇のある小さな自室に本棚いっぱいの本がある。なくなったときにその本棚を
改めて眺めてみると、全くもってものすごいバラエティの本だった。私の好きな作家から
知らない作家まで。遺品として本を貰った。

一緒に畑に行ったり、船に乗ってつりに行ったり、ほとんどは
のんびりと過ごした記憶が占めるが、
彼の言葉は、時にものすごくズシーンと響いた。

まず第一に私の一番小さい頃の記憶は、ソフに抱っこされているときに
「この子は鼻が少し上向いとるなあ」というソフの言葉と周りで母か誰かが
「そげなこといって、女の子なのに」といさめる言葉である。
この記憶が本当に一番最初の記憶かどうかはもちろん不明だけど、
確かに私の鼻は少し上を向いている。
このソフの一言はなぜか忘れられない言葉として残っている。

そして、もう一つが、大学の論文を見せたときだ。卒業の為に論文を書かねば
ならず、どうせ書くなら自分の本当に興味のあることで書こうとして仕上げた論文。
ただし、やはり「ダンス」を文字にしていく作業では、文字に出来ないある意味もっとも
大事な部分を切り捨てていく作業であった。それでも自分なりにまとめた論文を
なぜかソフに見せた。
努力を認めた上でソフは言った。
「この論文からは音楽が感じられないねえ」

ズギュ~ン。である。確かに論文では切り捨てた部分だった。そしてまたその事で
自分が「何か足りない」と思っていた部分であった。ソフはダンスのことなんて
知らないであろうに、まさにど真ん中打ち抜かれた気分になった。

その日以降、この言葉は常に私に付きまとい続けた。
アムスに来て、ようやく最近このときのソフに答える答えが出来た気がするのに
もうソフはいない。

つづく



by aka_pro | 2006-05-22 07:17 | 日々 amsterdam

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